おむつって、赤ちゃん用と、大人用があるけど、障害者用ってないのかな?
私は10年以上高齢者介護を仕事にしていますが、障害者支援に関しては外出援助やボランティアでキャンプに参加した程度でしか関わりがありません。
そんな私が、去年、肢体不自由児の親の会の方からの要望で、支援学校で排泄ケアの勉強会をさせて頂く事になりました。
当時考えた事、注意した事、調べた事を、今回は記事にまとめてみました。
時間の無い方は、「4.その他・おむつ紹介」の中の各種表だけでもご覧になって下さい(/・ω・)/
でも個人的に一番読んでほしいのは、記事の一番最後の「5.赤ちゃん用と大人用おむつの、作りの違い」です(/・ω・)/
1.障害者の親御さんと、排泄ケアを教える私達
勉強会は2019年の2月でしたが、それまでに親の会の代表の方とメールでやり取りしたり、私とチーム京都(京都に住むおむつフィッターの集合体)のメンバーで打ち合わせを行いました。
1.障害児の親御さんとのメール
肢体不自由児の親の会の代表の方とメールでやりとりをさせて頂く中で、代表の方からの
「先日、同じメンバーの保護者と話をしていた時にも、今すぐにでも教えて頂きたい事ばかりで2月まで待てない…と言ってるくらい子供の成長とサイズのフィット感の差(それは尿モレにつながるので)に悩みを持つ保護者が多いのです」
という言葉が印象に残りました。
障害児は…
成長の仕方によってお腹だけ大きくて足だけ小さいという事もよくあるので、
いわゆる既成品が合わない。
既製品に彼ら彼女らを合わせられない。
だから尿モレが多い。
今ある物で対策を打つしかない。
のです…
それでも私達は、親御さん達をがっかりさせないためにも、多くの情報を持っていたいと思いました。
2.(漫画)私達の打ち合わせ
本番は、私一人ではなく、京都に住むおむつフィッターの団体「チーム京都」の仲間と一緒に行きます。
そのメンバーと1月に会って打ち合わせをした時、あまりに楽しくて、喫茶店で笑いながらあっという間に1時間が過ぎて、もう楽しくて他のチーム京都の仲間にもその様子を教えたくて、
なんと漫画にしてみました( *´艸`)↓
(4コマ漫画11個+1コマ漫画2個…と多いです)
1.支援学校で排泄ケア
2.無理強いはしません
3.必要物品追加:風船
★毎年春に開かれる、インテックス大阪のバリアフリー展でも、風船におむつを穿かせていました↓
4.尿取りパッドと生理用ナプキン
5.おむつの絵とアンケート
6.排尿を教えてくれる便利機能
7.教える私達が気を付ける事
8.水様便対策
9.情報と知識と観察
10.おむつ吸収率の実験
※ちなみに「ノーポリ」とは、バックシートが無い尿取りパッド、つまり両面吸収パッドの事だそうです。職場によって呼び名って変わりますね…(^-^;
11.探究者
仲間たちとの1時間はあっという間で、嬉しくて頼もしくて、一緒に皆で勉強会が開けるのが、楽しみでなりませんでした。
3.漫画への反応
実はこの漫画を、肢体不自由児の親の会の代表の方にもメールで送らせて頂きました。
私達はこういう者ですという自己紹介も兼ねていました。
すると
「打ち合わせの様子の4コマ漫画とてもステキです!!楽しそうな雰囲気と皆様のお人柄が伝わってきます。
喜びつつ、改めて気を引き締め直した我々でした。
2.障害児者向けのおむつの、サイズの話
さて主催者(支援学校)の方に、サンプルでどんなおむつを持って来てほしいか伺ったところ、
いくつかの返信の中に「SSサイズのテープタイプ」というのがありました。
SSサイズのテープ式…?
1.SSサイズのテープ式おむつ
私の調べた限りだと、「SSサイズ」の表記でテープ式おむつを売り出しているのは、
●日本製紙クレシア
●リブドゥコーポレーション
この2社だけです。
しかしサイズだけ見ると
ヒップ50~85㎝なので、それなら
白十字サルバと大王製紙アテントの「Sサイズ」なら
ヒップ50~75㎝
だし、王子製紙ネピアの「Sサイズ」なら
ヒップ50~90㎝
なわけですよ。下は私が調べて並べた表になります。(2019年1月時点)
ここで忘れてはならないのは、サイズ表記は同じでも、メーカーや商品ごとに色んなコンセプトがあり、素材やギャザーの高さ、テープの長さなどが違うのです。
あそっか。サイズだけ見ても、一緒には語れないんだね
上の表を見てもわかる通り、同じヒップサイズ50㎝~でも、色々あります。
メーカーによってSSサイズと言ったりSサイズと言ったりします。
どれだけ伸びるのか、皮膚との相性はどうか、実際に見て触ってみない事にはわかりません。
1.障害児の親御さん達と対面
さあついに、支援学校で排泄ケアの勉強会をさせて頂きました。
親御さん達とわいわいお話ししてきました。
話題は「赤ちゃん用の一番大きいテープ式おむつと、大人用の一番小さいテープ式おむつの、中間がない」事でした。
上のイラストで言われている「リフレのSS」というのが大人用の一番小さいテープ式おむつにあたります。
●リブドゥコーポレーション・リフレ:ベビー用より大きく大人用より小さいサイズ
引用 リブドゥコーポレーション・リフレ:ベビー用より大きく大人用より小さいサイズ
とてもわかりやすいネーミングですね。
2.小さいテープ式おむつ・サイズ早見表
本当に「リフレのSS」しかないのだろうか?と思って調べた物が下の表です。
ヒップサイズだけ見れば、意外にたくさんあるやないか…
(注:白十字サルバと大王製紙アテントは同じサイズですし言うたら全部ヒップ50㎝~なので
小さい順に並べるというのも無理があるのですがまぁそれはさておいて。)
3.実物を(用意できた物だけ)並べてみた
※一番下の数字は長さ(全長(㎝))です(/・ω・)/
はい、おわかり頂けたでしょうか。
表では小さい順に
グーン → サルバ → アテント → リフレ → ネピア
なのですが、実際広げてみると
グーン → リフレ → アテント → ネピア → サルバ
となりました。※ブランド名表記です。
メーカー名で言うと
大王製紙 → 白十字 → 大王製紙 →リブドゥ →王子製紙ネピア
広げたサイズが
大王製紙 → リブドゥ → 大王製紙 →王子製紙ネピア →白十字
となります。
グーンもアテントも同じ大王製紙エリエールやな…やるなぁ…
4.赤ちゃん用おむつのビッグと、大人用おむつのスモールの間
さて話を戻しますが、どうやら本当に、
赤ちゃん用の一番大きい「グーンのスーパーBIG」のすぐ次が、
大人用の一番小さい「リフレのSS」のようです。
そしてその次が「アテントのS」なのです。
同じヒップ(グーンの場合胴囲)50㎝~でも、長さがこんなに違います。
グーンとリフレSSの長さの差が8㎝。
リフレSSとアテントの長さの差が6㎝。
グーン → ( ) → リフレSS → ( ) → アテント
この( )を埋める商品の開発を、メーカー様どうかお願いしますm(__)m
3.大王製紙に軍配
肌触りだけで言うと断トツで大王製紙アテントの「テープ式・背モレ横モレも防ぐ」が良かったし、あとネピアのテープタイプも柔らかくて良いと思いました(´・ω・`)
障害児者向けの勉強会を過去にも何度か行った経験のある、排泄ケアの先輩からは
大王製紙のおむつは好評ですよ
と聞いているし、おむつメーカーのコンシェルジェからも
障害児向けだったら、大王製紙さんが良いって聞くよ
と聞いています。
障害児向けなら大王製紙さん…( ..)φメモメモ
その後ネットでこちらの記事を見つけて読んで、ああなるほど…と思いました↓
●ママ達が行く! 肢体不自由のこどもたちを支える企業訪問 vol.1 大王製紙株式会社
大王製紙さんの事を知る事が出来る、良い記事でした。
引用 全国肢体不自由特別支援学校PTA連合会 「ママ達が行く! 肢体不自由のこどもたちを支える企業訪問 vol.1 大王製紙株式会社」
この中でも赤ちゃん用と大人用の間が無い事に、触れられています↓
こども用のスーパービッグと高齢者用のSSとの間のサイズやスーパービッグとその下のこども用SSサイズの間のサイズ、この2つがあったらっていう要望が一番多いんです。
当事者の方々にしてみれば、本当に切実ですよね。オムツ自体を作ることは可能なんです。
でも、作っても他のサイズと違って大量な消費は難しいから、当然、コストは高くなってしまいます。そこが対応の難しさなんです。
そうなんですよね……
障害児が成長の過程でどうしても必要になるサイズなんだけど、
でもずっと必要なわけではない。
売り上げも少ないから大量生産が出来ない、
工場のラインを一つ作るのにもお金がかかる…
だから作れない…
難しい問題ですね(>_<)
4.その他・おむつ紹介
大王製紙アテントの「テープ式・背モレ横モレも防ぐ」は後ろの方にこういうポケットがありますよ。
1.背中モレ対応のおむつ
●大王製紙アテント テープ式・背モレ横モレも防ぐ
上の漫画でもユニ・チャームの「ムーニーマンエアフィット」のゆるうんちポケット付きのこれを紹介しましたが、アテントのもこれに近いですね。
ただ、「尿をブロック」としか書かれていないので、軟便には効果が薄いのかもしれません。
●ユニ・チャーム ムーニーマンエアフィット
上の漫画を再掲します。
2.SSサイズの紙パンツ
上にも上げましたが、リブドゥコーポレーションからは
「ベビー用より大きく大人用より小さいサイズ」
というわかりやすいネーミングの、テープ式とパンツタイプが売られています。
●リブドゥコーポレーション・リフレ:ベビー用より大きく大人用より小さいサイズ はくパンツジュニアSSサイズ
引用 リブドゥコーポレーション・リフレ:ベビー用より大きく大人用より小さいサイズ はくパンツジュニアSSサイズ
こういう隙間商品は、他にもあるのでしょうか?
実際問題、赤ちゃん用おむつの一番大きい物と、大人用おむつの一番小さい物は、どれくらいあって、どの程度の差があるのでしょう?
赤ちゃん用紙おむつ(5社)のそれぞれビッグ以上のおむつと、大人用紙おむつ(16社)のウエスト・ヒップが50㎝以下の物を調べてまとめてみました↓
●各赤ちゃん用おむつメーカーの各商品早見表(2020年1月時点)
●上の表から、赤ちゃん用おむつの大きい物だけを並べた早見表(2020年1月時点)
●大人用おむつの小さい物だけを並べた早見表(2019年1月時点)
…まとめましたが情報が多すぎてわかりにくいですね…すみません…(^-^;
これらをさらにまとめた早見表を作ってみました↓
●小さい紙パンツ・サイズ早見表
パンツタイプの、更に胴囲(ウエスト)サイズを明記している物だけを集めて、大人用と赤ちゃん用を小さい順に並べてみました。
これを見ると、リブドゥのSSサイズの次も、グーンのスーパーBigの次も、意外と沢山あるように思えてきます。
3.SSサイズの、ホルダーパンツ
私が勉強会で、最終的に家族様に提案した商品が2つあって、一つがニシウラのふわふわフィットパンツのSSサイズでした。
●ニシウラ ふわふわフィットパンツ
ホルダーパンツでSSサイズ、ウエスト50㎝からあるのは、このメーカーだけなのです。
例えば他のメーカーのホルダーパンツは↓
と、Mサイズでも下はウエスト58㎝~だったりします。
ニシウラのふわふわフィットパンツの商品説明の中には
軽度の尿もれでパッドを使用している方、高齢者や重症心身障害児(者)、パウチ装着や腰部変形のある方、またトイレを使用できない状況下の方にもご使用いただけます。
と、障害児者にもスポットを当てて開発されている事が伺えます。
実はニシウラの社長の西浦さんは、おむつフィッターの1期1級というとんでもない人です。
(「おむつフィッター」は今でこそよく耳にしますが、1期生の頃は全く知名度もなく宣伝もされていなかったので、鳥取からわざわざ京都まで受講しに来られていたというのは奇跡に近いと思います)
ちなみにこの記事を書いているきょうしろうは「2期」1級です…
●尿取りパッドホルダーパンツ出荷開始 開発物語
当社は医療用や健康関係の機能を有する靴下製造が専門、他に5種類の粗ゲージ中丸フライス編機でハラマキ マフラー ショールを製造、20年前に流行した毛糸のパンツも製造したことはありますが高機能を必要とする本商品はまったく自信がありませんでした。
当然断りました。
「すごい靴下ですね、値段は高いけど1度履くと良さがわかりました」
「歩きやすいし、足が疲れにくいし、立ちっぱなしの展示会でも足は浮腫まないし、こむら返りもこの靴下を履くようになってからはなくなりました」
「運動会ではいつも最下位、子供の運動会の父兄の徒競走でも最下位でした。でもこの靴下を履きだしてからは最下位を脱出、今年は前から3番目、後ろからでも3番目になりました」
「すごい靴下です。この技術を持ってしたらパンツはできるんじゃないですか」
「紙パンツを最初から喜んで着用する人はいません。仕方なしに履かれています」
「重度身体障がい児の子供さんたちは生涯紙パンツです」
「せめて尿とりパットにしてあげたいです」
最初の来社が2016年3月、6月の4度目の来社の時でした。
諦めるだろうと思い言った言葉、「開発費を出しますか」
「出します。お願いします。皆さんが待っておられます」
鳥取市にある紙おむつの販売を主業務とする株式会社ニシウラの西浦社長とのやり取り、根負けしました。
これを読んで涙ぐんでしまったのですが(´;ω;`)
私が上の方でご紹介した「障害児者向けの勉強会を過去にも何度か行った経験のある、排泄ケアの先輩」というのは実はこの西浦社長の事です。たまたまSNSで知り合い、勉強会の前に相談に乗って頂いたのでした。
4.一分丈の紙パンツ
私が家族様に提案したもう1つの商品は、光洋オンリーワンパンツのSサイズです。
●光洋 オンリーワンパンツ
引用 光洋 オンリーワンパンツ
一分丈紙パンツ比較
上の表でわかる通り、一分丈の紙パンツを作っているメーカーは3つあるのですが、その中でSサイズで、ウエスト50㎝~を作っているのは光洋だけなのです。
一分丈なら、すき間モレがしにくい。光洋の紙パンツなら、良く伸びる。肌ざわりもとても良いので、安心してお勧めが出来ます。
ただ、それでも全員にこれが向いている!とお勧めできるわけではありません…試してみない事にはわかりませんね…
5.赤ちゃん用と大人用おむつの、作りの違い
さきほど上に示した赤ちゃん用と大人用のおむつの表は、あくまでもウエストサイズだけを比較した表です。
赤ちゃん用と大人用で、作りに違いがあります。
上でリンクを貼らせて頂いたこちらにも、作りについて言及がありました↓
引用 全国肢体不自由特別支援学校PTA連合会 「ママ達が行く! 肢体不自由のこどもたちを支える企業訪問 vol.1 大王製紙株式会社」
こども用のスーパービッグと高齢者用のSSとの間のサイズやスーパービッグとその下のこども用SSサイズの間のサイズ、この2つがあったらっていう要望が一番多い
大人用オムツを使ってみて、ギャザーが緩いなって感じたんです。こどもは動きが激しいからギャザーがしっかりしているけど、大人用といっても高齢者が使うオムツは動きが激しくないから、ギャザーが緩いんですかね。これが、肢体不自由のこどもたちが使うと漏れの原因になる
高齢者用オムツのサイズは大きいけど瞬間吸収っていう点では、こども用のほうが力があると思う。高齢者の場合は、一回のオシッコの「量」も少ないし、大きく違うのは「勢い」が違うんだと思う。量も多くて、勢いも強いから、オムツの中で水たまり状態ができて、漏れるっていう感じになる。だから、高齢者用オムツのギャザーに吸収体があればいいのにと思います。
ベビーサイズは腰のあたりまで吸収体があるのに、大人用だと減っちゃうんですよね。だから、長い間替えられないときには駄々漏れになっちゃうんです。
まとめると↓
●大人用おむつはギャザーが緩い
大人用おむつの主なユーザーである高齢者の中には、皮膚の弱い人も多くて、ギャザーでかぶれてしまう事も少なくないのよね…ギャザーが緩い、弱い、優しいのは、仕方ないかもしれないな…
●大人用おむつは瞬間吸収できない(強い尿勢や一度に大量の尿には対応できない)
高齢者の排尿は「ちょぼちょぼちょぼ…」という感じで、勢いがないからね…。あ、でもリブドゥコーポレーション・リフレから尿勢に特化した尿取りパッド「スピードキャッチ」が出てるよー
引用 リブドゥコーポレーション・リフレ「スピードキャッチパッド」
この商品は長らく「スピードキャッチパッドビッグ」という名前でしたが、リニューアルしたのか
2020年春現在で「スピードキャッチパッド」と「スピードキャッチパッドスーパー」という名前で2種類が出ています。
●赤ちゃん用おむつには腰のあたりまで吸収体があるが、大人用は腰までは無い
これどうなんだろう…赤ちゃん用おむつは小さいから面積が少なくて、吸収体を腰のギリギリまで持ってこないといけないだけなんじゃないかな…(想像ですが)。正直股間から出ている尿を腰まで誘導させる必要はないので、股間部分で全てが吸収出来たら良いと思うんだけどな私は。
結論
高齢者介助しかしてこなかった私には、おむつの大人用と赤ちゃん用の違いを聞いて目から鱗でした。
なんて勉強になるの…!
単にウエストサイズだけで選んでも、漏れてしまったら意味がありませんね。
上に貼った、私の作った早見表は、あまり意味がないようです。
参考程度にはなるかもしれません。
障害児者に向けてこれが正解!とはっきりした答えを出す事は出来ませんが、
これとこれとこれはどうだろう…?といくつかの提案をさせて頂く事は出来ます。
メーカー各社様に、もっと声が届くと良いなぁと思います。
赤ちゃん用と大人用の間の、隙間の商品をもっと作ってもらえたら、悩む親御さんは減るのではないかと思います。
今回は以上です。
読んで頂きまして、ありがとうございました。
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