昔、医療や介護現場ではおむつを重ねて使う事が多かったらしいよ
さて、何で昔の現場の人たちはおむつを重ねて使っていたのでしょうか?
今回は、昔の現場の事情と、重ねてはいけない理由について、書いていきたいと思います。
1.尿取りパッドを重ねていた理由
医療・介護の現場は、病院や施設以外に、在宅でもあります。それぞれの現場で昔は、おむつを重ねて使う先輩達がおられました。
漫画:尿取りパッドを重ねる現場
私が介護士1年目の時の思い出を、漫画にしました。
最近ではこんな非常識な事を教える先輩はいないかもしれませんが、
昔は、少なくとも私が介護士になりたての2006年頃は、
尿取りパッドを重ねて使う事を推奨するベテランのヘルパーさんや看護師さんがいました。
でも当時のヘルパー2級講習の時の講師の先生は「それはしてはいけない」と教えてくれたのでした。
今は教えるまでもなく、現場でこれをする人はいないと思います(多分)。
尿取りパッドを重ねていた理由
昔の現場で尿取りパッドを重ねていた理由には
- 大容量の尿取りパッドが無い、あっても高い
- 寝たきりの人にはおむつ以外の福祉用具が他に無かった
- 介護保険の始まる前はまだ当事者目線の考え方が確立されていなかった
- 褥瘡について正しい知識を持つ者がいなかった
- 先輩達から連綿とこのやり方が受け継がれてきた
などなどが挙げられると思います。
昔は今ほど、おむつの種類が豊富ではありませんでした。
大容量のパッドも、昔は全然出回っておらず、単価も高かったようです。
なので安い1回分や2回分吸収のパッドをたくさん重ねて、大容量パッドの代わりとしたと聞いた事があります。
自動採尿器も安楽尿器もポータブルトイレもまだなかったのではないでしょうか。
聞いた話なのでよく分かりませんが、尿取りパッドのバックシートに穴を開けて、容量を超えた分の水分が下のパッドに移るようにしていたそうです。
今の尿取りパッドとは構造が違うので、今のパッドではできませんとメーカーの方から聞いた事があります。
これらは当時の時代背景もあり、今ほど物が無い事情もあったと思うので、今の価値観で当時の先輩達を批判する事はできません。
今私達がしている介護も、数年後の人達から見れば非常識かもしれないなー
2.尿取りパッドを重ねてはいけない理由
ではなぜ、パッドを重ねてはいけないのでしょうか。
上の漫画の利用者さんは、「痛い」と話していました。
痩せている方でした。そこに3枚もパッドを重ねられては、余計に段差ができて、圧迫されて、痛かったでしょう。
重ねてはいけない理由として
- 通気性が悪くなり、蒸れて皮膚を傷める
- 段差が出来、皮膚を圧迫し痛みが生じる
- 少しの動きでパッド同士がズレ、皮膚を引っ張り、傷を作る
- 重ねる事ですき間が出来てモレやすくなる
- 活動しにくくなる(身体面、精神面)
- 座位姿勢が悪くなる
の6つが挙げられます。
1・通気性が悪くなり、蒸れて皮膚を傷める
最近はバックシートが不織布で出来ていて、通気性の良い物が出回っています。出回っているからその分安くなり、手に入りやすくなりました。
かといっても、重ねるとその分通気性は悪くなりますね。
通気性が悪いと、湿気を逃がせず陰部が湿潤状態で、皮膚を傷めます。
2・段差が出来、皮膚を圧迫し痛みが生じる
これは上の漫画でもお伝えした通りです。
「痛いもん…」とあの方は仰っていました。
例えば丸めたタオルを背中に敷いて寝たら、痛くて寝ていられないでしょう。
靴に石が入っていると、踏んだ時に皮膚に食い込んで痛いでしょう。
部分的に圧迫されると皮膚は痛いのです。
3・少しの動きでパッド同士がズレ、皮膚を引っ張り、傷を作る
テレビ番組「笑点」では上手い答えをすると座布団をもらえますが、8枚9枚と重なると、とても不安定で危なっかしいですよね。重ねるとズレるのです。
尿取りパッドを重ねると同じようにズレが生じますし、ズレは皮膚を引っ張り、褥瘡を引き起こします。
上記1~3の「蒸れ」も「段差」も「ズレ」もすべて、皮膚にストレスがかかって、褥瘡に繋がるやつだね。
褥瘡は一度出来ると治りにくいよね…気を付けようね
4・重ねる事ですき間が出来てモレやすくなる
パッドはぴったりきちんと当てていないと、隙間が出来てモレ易くなります。
パッドを重ねると隙間が出来てしまうので、モレ易くなります。
5・活動しにくくなる(身体面、精神面)
紙パンツの上からズボンをはくだけでも、少しモコモコすると思います。
最近ではおしゃれな、薄手の、ローライズの紙パンツも販売されています。
その中に尿取りパッドを重ねて穿いたらどうなるでしょうか。動きづらくなります。
そして見た目も悪くなる。そんな自分の姿は見にくいですし、そうなると気持ちが沈みます。
外に出るのが嫌になり、だんだんと鬱傾向になります。
身体的にも動きづらくなりますし、精神的にも動けなくなるのです。
6・座位姿勢が悪くなる
座位姿勢が崩れる事は今後、立ち上がりから食事動作、排泄動作等ひとつひとつに介助が必要になり、そのまま寝たきりにつながります。
こちらの記事にも書いていますので良かったらご覧ください↓
他にも「重ねる事でカサが高くなり、アウターのギャザーを潰す」も上げられますが、これは軟便時に被害が拡大するパターンです。
3.各おむつメーカーの画像
各おむつメーカーのサイトでも、重ね使いをしてはいけない事をイラスト付きで教えてくれているので、ご紹介します。
●ユニ・チャーム ライフリー
●リブドゥコーポレーション
●カミ商事 エルモア いちばん
●ケアマネドットコム
引用 ケアマネドットコム 夜間排泄ケアが排泄ケア相談のなんと4割
おむつのサイトではありませんが、とってもわかりやすいイラストですね。
4.結論
たくさん書いてきましたが、安易におむつを当てる事、パッドを重ねる事は、その方の尊厳を傷つける行為ですので、やめましょう。
おむつは重ねてはいけません。
はい、今回は以上です(/・ω・)/
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