新しく入った看護師さん、利用者さんのパッド交換の時にパッドの中に更にもう1枚パッドを蛇腹に当てていて、びっくりした…
え。何のために??
パッドの容量を増やす為だって言ってた…
現場で排泄ケアをしていると、色んな尿取りパッドの当て方や、技術・知識を持つ人がおられます。
そのやり方は正しいのだろうか…?と疑問に思いつつ、立ち止まれずに長い物に巻かれて、毎日が過ぎてしまう事もよくあります。
今回は両面吸収パッドの使い方について、メリットとデメリットを深く掘り下げて考えていきたいと思います。
1.両面吸収パッドとは
両面吸収パッドってご存知でしょうか。
尿取りパッドとは違い、バックシートが無く、どの面からも吸収できる、吸収体そのまんまのやつです。
バックシート(防水シート)がないので単体では使えません。
メーカーはこれを、パッドではなく「補助シート」として扱っています。
2.使用のメリット
両面吸収パッドの使い方、メリットを簡単に説明すると、
- パッドの容量を増やす(パッドに足し算として使える)
- 尿の流れを誘導する
- 尿勢を緩和する
…という感じになります(´・ω・`)
1.メーカー別に見る使用例
各メーカーが挙げている両面吸収パッドの使用例を見てみましょう。
●王子製紙ネピア
両面吸収パッドは、パンツタイプやテープタイプと組み合わせることで吸収力が更にUP。パンツやテープが濡れていない時にはパッドのみの交換で済むため、経済的にご利用いただけます。
●白十字サルバ
おむつ・パッドと一緒に使って吸収量を増やすための補助パッド
防水シートのない両面吸収タイプこんな方に:おむつ・パッドの吸収量をアップさせたい方
引用 白十字サルバ尿吸収シート 吸収量をふやすための補助シート
じゃばらの事をアコーディオンて呼ぶのおしゃれでんな…(´・ω・`)
白十字サルバって男性用のパッドが他メーカーの追随を許さん勢いで量産してるけど、両面吸収パッドの使い方までも男性用の使い方のバリエーションが豊富(´・ω・`)
●光洋ディスパース
●さらさらスリム
・防水フィルムのない両面吸収の補助パッド。
・逆戻りが全くなく、常にさらさらをキープ。●さらさらミニ
・さらさらスリムの小型版。
・隙間を埋めるなどの用途に最適。
便の背モレ対策!(´・ω・`)なるほど…
●第一衛材フリーネ
防水機能を持たない両面吸収タイプで他のパッドと重ねて使うことにより吸収量を高めます。
モレ対策に効果的な補助用パッドです。
引用 フリーネ両面吸収パッド
●大王製紙アテント
●リブドゥコーポレーション・リフレ
●花王リリーフ
●日本製紙クレシア
●カミ商事エルモアいちばん
2.各メーカーをまとめた表
各メーカーの出している両面吸収パッドの早見表がこちらになります↓(2017年時点※値段は変動しますので参考程度で)
3.じゃばらにするのはなぜ?
上に載せた各メーカーの使用例にもありますが、あの「じゃばら」にして使う効果は何でしょうか?
真っすぐだとアカンの?
じゃばらにする事で吸収する面積を増やせるんやで
真っすぐだとすぐに下に貫通してしまうのですが、じゃばらにする事で吸収する面積を増やす事が出来ます。
1.絵で確認
とりあえず絵にしてみました↓
と、絵にしてみたのですが、実はこの絵には嘘があります。どこでしょう?
実際じゃばらにして尿をしみこませると、こうなります↓
パンパンに膨れ上がります。
2.恥骨骨折に注意
「両面吸収パッドをじゃばらで当てていて恥骨骨折した」という事例もあるのだそうです。
恐らく、尿をたっぷり吸収してパンパンに膨らんでいる状態で、座ってしまったのだと想像します。
下からの圧が思いっきり股間に来たら、健常者でも相当痛いでしょうし、高齢者では骨の脆い方も少なくなく、骨折する事も十分考えられますね。
ちなみに私が以前勤めていた老健では、車いすの女性入居者さんが頻尿で、しょっちゅうトイレに行っていて、恥骨骨折しました。
ドスンと座るのを何度も何度も繰り返した事が原因です。
じゃばらにしていてもしてなくても、高齢者は何がきっかけで骨折するとも限らないのです。
また、じゃばらの膨らみは座った時だけでなく、横になっている時にもじわじわと皮膚を圧迫していきます。
排尿後のパッドは出来ればすぐに取り外してあげましょう。
3.じゃばらは尿路感染症になる?
ネット検索していると、「パッドのじゃばら使いは尿路感染になるのでしてはいけない」と言っている方を見かけました。本当なのでしょうか?
例えば「介護・福祉の応援サイト けあサポ」でもこのような質問が寄せられていました↓
引用 困ったときのQ&A そのほか お女性用のパッドについて|介護・福祉のけあサポ
「蛇腹は、尿が陰部に戻ってしまい、膀胱炎や尿路感染になってしまう」 と言っておられる。
これに対して日本コンチネンス協会会長の西村かおる先生は、
原則として、パッドは蛇腹の使用はしません
と返事をされています。パッドの構造上、じゃばらに使用できるようにはなっていないから、と説明されています。
※ただ、両面吸収パッドは別です。各メーカーもじゃばら使いを推奨していますし、それが出来る構造になっているからです。
西村先生は膀胱炎のくだりもこう話されています↓
蛇腹が膀胱炎の原因になるという根拠はありません。ただ、パッドを使用している人は、使用していない人よりも尿路感染が多いというデータはあります。尿路感染の理由はさまざまありますが、長時間交換しなかったり、吸収量が漏れ量より少ない場合、また寝たきりで残尿が多い、便失禁があるなどが挙げられます。
じゃばらのせいで膀胱炎になるのではなく、尿取りパッドを使用している以上は誰でも膀胱炎になりやすいという事のようです。
3.使用のデメリット
ここまでメリットを挙げていましたが、デメリットの話をする時は、メリットを打ち消す事になるのです。
①パッドの容量を増やす→それなら始めから尿量に相応しいパッドを1枚使いにした方が良い。いくらバックシートが無いとはいえ、パッドと両面吸収パッドを合わせて使うのは、いわゆる「重ね使い」にあたる。またコストもかかる。※両面吸収パッドは1枚30~40円ほどします。
②尿の流れを誘導する→きちんとパッドのギャザーが鼠径部に当たり、アウターがぶかぶかでなければ(身体にフィットしていればパッドは動かず)尿は漏れない。
③尿勢を緩和する→尿の勢いというのは実際は泌尿器科の尿流測定器で測るなどしないと分からず、感覚や想像で語るべきではない。(しかし一般的に比較的若い利用者、もしくは若い障害者なら尿勢は強いと思われる)。
もしも尿の勢いが強いのであれば、
①パッドを谷折りにする ②尿勢に特化したパッドを使用する(リブドゥ・リフレの「スピードキャッチパッドビッグ」など)事で緩和出来る。
…両面吸収パッドは色んな使い方が出来るし、モレも防げるし、もっと一般に広がれば良いのに、と以前の私は思っていました。
ですが骨折や皮膚トラブルに見舞われる例が意外に多い事を知るにつけて、やはり他のパッド同様、安易に使ってはいけないし、それをしっかりと周知していく必要性があるのだと強く感じるようになりました。
腱が浮き出るほど痩せているか、よほど拘縮がきつい人以外は、普通のおむつで十分だと思います。
結論
両面吸収パッドは便利に使える物ですが、使う前に「他に方法はないのか」「安易な重ね使いになっていないか」「無駄にコストがかかっていないか」等は一度考えた方が良いですね。
ここまで読んで下さり、ありがとうございました(´・ω・`)
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