【排泄ケア】おむつを異食してしまう方への対応

排泄ケア

こないだ職場のおばあちゃんが花瓶の水飲んじゃってた…

「異食」ってやつかな

うん。

介護現場には、異食してしまう利用者様がたまにおられますね。

花瓶の水を飲んでしまうという程度ならまだ良いですが、自分の便やおむつを食べてしまう方もおられます。

そのような時、皆さんの職場ではどのような対応を取られているでしょうか。

今回は「異食」そのものではなく、「おむつ異食の対応」にテーマを絞って、話をしていこうと思います。

1.実録

私は特養と老健、そして在宅でも介護職員をしていました。

在宅ではティッシュや乾電池を口に含んでいた方もおられましたが、そこまでになると独居継続は不可能なので、緊急でショートステイ利用となり、そのまま入所となるパターンでした。

独居だと周りに誰もいない時間が長くなり、窒息などの場合に発見が遅れて、命の危険があるからです。

では施設ではどうなのか?職員が24時間いるから安全?

いえいえそんなはずはありません。現場でもみんな苦労して対応をしています。

ここでは私が印象に残っている事例を2件ご紹介します。

1.便異食する寝たきりの人

私が特養で介護士をしていた頃。

夜勤明けで、さぁもう帰れるぞという時に、最終チェックで各部屋を覗いていたら、

口周りにべったりと便を付けて、

手も衣類もベッド柵も、便まみれの入居者さんを見つけた時は、

その場に倒れそうになりました。

すぐさまエプロンや手袋を装備をして、

ご本人の全身を拭き、

口腔ケアを行い(噛まれながら)、

おむつ交換、

陰部洗浄、

全身衣類交換、

窓を開けてベッド柵を拭き、

消毒を行い、

寝具カバーもすべて交換して…

そして最後に事故報告書を記入して提出…帰る頃には遅出の職員も出勤して、昼食の準備なんかを始めている。

げっそり疲れて帰るのでした。

この事故報告書に「対策」とやらを書かないといけないわけですが、一体どうすれば良かったのか、今後どうすれば良いのか…

…結局何も思い浮かばず

巡回強化」だの

排便の兆候があればすぐにおむつを交換できるようにする」だの

苦しまぎれの事を書いて提出せざるをえませんでした。

2.よく歩く元気な要介護5・アルツハイマー型認知症重度の人

この方は、しっかり歩く事が出来る、元気な方でした。

しかしアルツハイマー型認知症の重度で、要介護が5でした。

あちこちに放尿してしまうし、コンセントを引きちぎって口に入れてしまうし、紙パンツの中に入れていた尿取りパッドの端っこを食べている所を発見された事もありました。

座るとなかなか立ち上がる事もされないので、食堂など居室の外に出ると移動介助に時間がかかりました。

そうしてだんだんと部屋に押し込めるような対応になっていき、それが余計にご本人にストレスを抱えさせ、居室内の色々な物を破壊されるようになりました。

主治医が処方した認知機能改善薬も、全く効きませんでした。

ある日決意をして私達は、彼を部屋から連れ出し、事務所で文字を書いてもらったり、外で草取りをしてもらったり、食事もみんなと一緒に摂ってもらうようにしました。

椅子の代わりに車いすに座って頂き、立てそうなら立って歩いて頂き、無理そうなら車いすで移動介助を行いました。

これらの対応が功を奏したのか、みるみるうちに放尿は減り、破壊行動は減っていきました。

 

心が満たされたからなのか、なぜなのか、異食や破壊行動が減った理由はわかりません。

こういう話はまるで認知症者への対応のよくある手本や教科書みたいですが、でも関わり方や一日の過ごし方を変える事で、症状が和らいだり治まる事もあるのだなと学びました。

2.異食の対応

介護現場で起きた事を介護職だけで解決させる必要はありません。

まずは主治医に現状を報告、相談する事が大事です。

薬の見直しなどをしてくれるかもしれません

その状態がいつからか、日中はどういう様子か、今まで何時頃にどういう物を食べようとしたか等、詳しく記録にとって渡せるようにしておきましょう。

それと環境の整備。

なんでも手に取って口の中に入れてしまう恐れのある方は、鉛筆1本でも危険です。

何もない部屋を作るのは容易ではないですが、出来うる限り、物を減らす方が良いでしょう。

お腹が減らないよう、適宜お茶やおやつの時間を設けたり、別に意識を向けるように散歩などにお連れする事も有効です。

※しかし糖尿病の方や水分制限のある方もおられるので、必ず主治医への確認を行いましょう。

3.おむつ異食の対応

おむつ(尿取りパッド・紙パンツ等)を食べてしまう人は、本当ならトイレで排泄をしてほしいのですが、寝たきりの方の場合はそうもいきません。

歩ける認知症の方も、尿意便意を伝えられなかったり、トイレの使用方法がわからなくなっていたりで、おむつに頼らざるをえませんね。

①排泄のリズムの把握

おむつを食べてしまうのは、「排泄後のおむつが肌に当たって気持ち悪くて外してしまい、外してみたがそれが何なのか分からず、口に入れてしまう」という流れがありそうです。

排泄後にすぐにおむつを取り替えてあげられたら良いのですが、ご本人がそれを言う事が出来ない場合、どのようにして察知してあげる事が出来るでしょうか?

それには、排泄のリズムを把握する事をお勧めします。

まずは1時間ごとにパッドの確認を行い、それを3日間続ける。その記録から、その人の大体の排泄パターンを掴む。

ぴったりでなくとも、例えば朝食後にすぐにおしっこ出ているとか、排便は入浴後にいつも出ているとか、そういう事がわかれば良いと思います。

大事なのは、いつ援助に行っても失禁しておむつを食べているのを知っていながら同じ時間に援助に行くとか、人手も足りていないのにその人だけ援助をやみくもに増やすという事を、しない事です。

しっかり分析して、ピンポイントに援助を入れた方が効率が良く、介護者の負担を減らすことができます。

とは言っても、単におむつが股間に当たる事が気持ち悪くて、陰部を掻いているうちにパッドも引き出して食べてしまったりという方もおられるので、必ずしも排泄後のパッドが原因ではない場合もあります…

②あえて大きい尿取りパッドにしてみる

股に大きいパッドを挟んでいると、実は意外に、容易には外せないのです。

小さいパッドだと簡単にシュッと外せてしまうのですが、大きいパッドで、しかも後ろにシールが貼ってあったりすると、外す事は困難です。

例えば「ハイパー2000」という大きいパッドを、ホルダーパンツの中に入れるとこんな感じになります↓

 

ただ「外せない」わけではなく、外してしまうまでに「時間を稼げる」だけなので、根本的な解決にはなりません…

③布のパッドを使用する

布製であれば、紙製のようにポリマーだらけになる事を防げます。

自然志向だったり身体を冷やさないように、最近では生理用ナプキンに布製品を使用している方も少なくありません。

最近では生理用だけでなく、吸水用も売られています。

「尿取りパッド 布」で検索すれば色々出てくると思います。

私も以前購入した事があります(未使用)↓ 確か45cc吸収。

しかし大抵が100cc前後吸収のちょいモレ用だったりするので、大失禁してしまうような方には不向きです。

そんな方には(株)ニシキの販売している大人用布パッドをお勧めします。

●(株)ニシキ 布ケアパッド

引用 (株)ニシキ 布ケアパッド 600cc対応

(株)ニシキからは、布製の尿取りパッド「布ケアパッド」が200~600cc吸収タイプまで出ています。

  • 200cc吸収 1200円
  • 350cc吸収 2000円
  • 500cc吸収 2800円
  • 600cc吸収 4000円

※値段は公式サイトに載っていたものです。税、送料などは別です。

※ちなみに200cc吸収の物は廃番につき在庫限りだそうです…。

モレを防ぐために裏側に防水布も付いています。

布パンツの中に入れて使用が出来ますが、普通のサイズだと重さでパンツ自体がずり落ちてしまうかもしれないので、外側に穿く下着はピタッとしたホルダーパンツが向いているかもしれません。

ホルダーパンツ例↓

引用 白十字サルバ おしりピッタリパンツ

紙の尿取りパッドと違い、使い捨てではなくその都度洗濯して使う必要があるので、洗い替え用に何枚も買っておかないといけませんね。

仮に一日に5回の交換をするなら、毎日1回洗濯するとして、干して乾かしている間のもう1セット必要なわけだから、最低10枚は必要になる。値段にすると、

例)350cc4枚・600cc(夜間用)1枚なら、2000円×4枚+4000円×1枚=12000円。これを洗い替え用にもう1セットとすると、合計24000円。

安くはない買い物です…

しかも布であっても、食べてしまう方はおられます…。つまり布にしたからと言って、万全ではないのです…

④紙パンツ1枚対応にする

パッドを挟んでいると結局自分で外せてしまい、口元まで持って来て、口に入れてしまう。

だからもう何も挟まず、紙パンツ1枚対応で良いじゃん、という話です。

しかしこれにはいちいちズボンも脱いでもらわないといけなくて、後始末も大変という事になります。

ズボンを脱がずに履ける紙パンツもあります↓

●ユニ・チャームライフリー  ズボンを脱がずに交換リハビリパンツ

ライフリー ズボンを脱がずに交換リハビリパンツ

引用 ユニ・チャームライフリー  ズボンを脱がずに交換リハビリパンツ

漫画:ズボンを脱がずに交換リハビリパンツと2Wayタイプ(テープ/パンツ両用タイプ)

ズボンを脱がずに交換リハビリパンツの穿き方↓

以前私も研修でこれをはいて、中に重たいパッドを入れて歩いた事があります。

メリットはズボンを脱がずに交換できる、穿ける事です。

デメリットは、テープ部分が短いかも。

介護の必要な人は、身体が真っすぐな人ばかりではないので、身体が曲がっている人には厳しいかもしれない。

でも、それを補う為か、ゴムは全体よく伸びる印象でした。

もしもテープ部分が短いなと感じる人でしたら、2WAYタイプの紙パンツでも良いかもしれません。※2WAYタイプ(テープ式にもパンツにもなる)

※ただしその分テープが見えておむつ感が出てしまいます。

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ちなみに2つのメーカーから出てます↓

●リブドゥコーポレーション へんしん自在ピタッチパンツ

引用 リブドゥコーポレーション へんしん自在ピタッチパンツ

●花王 リリーフ テープ式にもなるパンツ

リリーフ テープ式にもなるパンツ M~Lサイズ [14枚入]

引用 花王 リリーフ テープ式にもなるパンツ

花王さんの、以前は「リハビリスタートパンツ」という名前で売り出していたのですが、2009年からこの名称に変わりました。

さて話を戻しますが、これらも結局、介護者が替えやすいという事はご本人も外しやすいという事で、リスクはあります。

人によっては紙パンツに失禁後、吸収体が膨らんだのが気持ち悪くて、まさぐっているうちに表面の紙が破れて、手がポリマーだらけになって、それをまた口元に持っていって、食べる…というパターンもある…

この対応も、やはり万全ではありません…

⑤テープ式おむつ後ろ前対応

これは寝たきりの方に対してですが、拘束になるので大声では言えません。

これをした時は、テープ部分を自分で外し、尿取りパッドを口にくわえていた方がおられたのでした。

この時は異食未遂に終わったとはいえ、今後もし発見が遅れれば窒息死する可能性もある。それを家族様に説明、承諾を得た上で行われました。

私が以前勤めていた特養の別フロアでは、ズボンを後ろ前に穿かせ、後ろで紐で結ばれている利用者様がいました。「え…拘束やん…」とドン引きした覚えがありますが、そのフロアでも考えに考えた結果で、家族様の了解を得た上での策だったのかもしれません…。

一旦身体拘束についておさらいをしておきたいと思います↓

厚生労働省 「高齢者福祉における身体拘束の基準について」

禁止の対象となる具体的行為が以下のように示されています。

① 徘徊しないように、車椅子や椅子、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
② 転落しないように、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
③ 自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲む。
④ 点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢をひも等で縛る。
⑤ 点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、または皮膚をかきむしらないように、手指の機能を制限す
るミトン型の手袋等をつける。
⑥ 車椅子や椅子からずり落ちたり、立ち上がったりしないように、Y 字型抑制帯や腰ベルト、車椅子テーブル
をつける。
⑦ 立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるような椅子を使用する。
⑧ 脱衣やおむつはずしを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる。
⑨ 他人への迷惑行為を防ぐために、ベッドなどに体幹や四肢をひも等で縛る。
⑩ 行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる。
⑪ 自分の意思であけることのできない居室等に隔離する。

引用 厚生労働省 サービス提供事業所における虐待防止指針および身体拘束対応指針に関する検討

ズボンやテープ式おむつを前後逆に着用させるのは、ここでは⑧にあたるよね。

「利用者又は他の利用者の生命又は身体を保護するため、緊急やむを得ない場合」には認められるんやで。

緊急やむを得ない場合は、次の3つの要件すべてを満たさないといけません。

●切迫性
●非代替性
●一時性

切迫性は「利用者本人又は他の利用者等の生命、身体、権利が危険にさらされる可能性が著しく高いこと」、非代替性は「身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替するサービスの方法がないこと」、一時性は「身体拘束その他の行動制限が一時的なものであること」を言います。

これら 3 つの要件を基本として、以下の点を記録に残す必要があります。

a.拘束的介入が用いられるべき状況
b.具体的な方法
c.1 回あたりの使用時間
d.選定された方法が利用者本人にもたらす利点
e.選定された方法が利用者本人にとって、最も拘束度合いの低いものであることの具体的証明

介護現場ではズボンやおむつを後ろ前逆に着用してもらう事も、これらの要件を全て満たしてでないと、してはいけません。

⑥拘束着

書きたくはありませんが最終手段です。

私の経験では、ここに至るまでに、順番としては

→テープ式+尿取りパッド

→次にテープ式後ろ止め+大きい尿取りパッド

→次に紙パンツ1枚対応

→次が拘束着

…という順番でした(いえ、ここまで想定していましたが、実際はADLが下がったり、入院、ご逝去などが理由で異食が無くなったので、紙パンツ1枚対応止まりとなりました。)

何も一足飛びに拘束着に行き着いたわけではなく、試行錯誤の末の、段階を踏んでいった証拠の記録は家族様にもしっかりとお見せして説明を行い、ご本人を守る上でもどうしても拘束着が必要なのだ、他に策がないのだ、と理解と了解を得た上で、拘束着を購入…という流れとなります。

ここに至るまでにご本人が弱り切って入院というパターンはかなり多いですね…

結論

結局、おむつ異食への対応は、全員に万能な策はありません。

ですが、どれが功を奏するかはわからないので、上記に示した策を一つ一つ試してみる価値はあります。

また繰り返しになりますが、介護職だけで悩まず多職種(医師・薬剤師・看護師など)へも状況を報告し、一緒に解決策を考えてもらいましょう。別の視点から、打開策も生まれるかもしれません。

それら試行錯誤の経過は記録に残し、都度家族様にも説明を行っていきましょう。

 

ここまで読んで頂きまして、ありがとうございました。

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