おむつ交換のし過ぎで腰が痛い…
わー。お大事にね…。ベッドの高さは、ちゃんと毎回上げてる?
時間が勿体ないから、上げてないよ。
上げたら下げないといけないし。
きっと忘れるし。
下げ忘れを同僚に指摘されたらムカつくし。
下げ忘れて転落事故とか起きたらまじめにやってるの馬鹿らしいし。
ええねん…私の腰が犠牲になればええねん……
うわぁ………
私は特養で介護士をしていた頃に、椎間板ヘルニアになり入院をしました。
介護と腰痛は切っても切れない関係にあります。
今回は、腰痛予防の勉強会に参加した時の話や、介護ベッドの高さのエビデンス、私が考える理想のベッドについてなど、あれこれ書いていきたいと思います。
1.腰痛予防勉強会・備忘録
介護の仕事をしていると、腰を痛めてしまう方が多いですね。
ボディメカニクスを守っていないからでしょうか。
違いますよね。
ボディメカニクスを守っていたところで、毎日毎日何人もの人間を、持ち上げたり運んだりおむつ交換をしたりするのだから、身体が悲鳴を上げているのです。
腰痛を予防する事は、出来るのでしょうか。
ここでは2019年8月に私が参加した、腰痛予防の勉強会の話を、私個人の備忘録も兼ねて、書き連ねていきたいと思います。
1.腰痛が起こりそうな場面
勉強会では、グループワークで、「腰痛が起こりそうな場面」というのを皆で挙げていきました。
- おむつ交換
- シーツ交換
- 入浴介助で足元を洗う時
- 体重が重い人を移乗する時
- 配膳車の下の方の物を取る時
- 掃除機かけ
- トイレの狭い空間での介助
- リフトにスリングネットをかける
- 重い物を棚から出す時
- バイクを停める時
…などなど。
個人的には腰痛対策になるはずのリフトで腰痛が発生するのがツボりました(・ω・`)
でも確かに、そうだったなぁ…(遠い昔に操作した記憶)
2・オーストラリアの腰痛予防
この勉強会の講師の先生は理学療法士なのですが、先生が「オーストラリアに研修に行った時の話」というのがとても面白かったので、下にまとめてみました。
●オーストラリアの病院では、コンセントの位置は全て腰の位置より上にある。そうでないと建物も建てられないように腰痛予防が徹底されている。
●掃除機もリュックのように背負うタイプの物。
●腰痛予防は医療の現場から発信して、それが他の産業にまで影響を及ぼしている。
●利用者よりも職員を守る。
●コケそうな人を助けて共倒れになってはいけない。だから手を繋ぐ時も、自らの親指は中に閉じた状態で手を繋ぐ。相手に引っ張られても逃げられるように。
●歩行介助は壁のスレスレを相手に歩かせる。相手がコケそうになったら相手を壁に押し付けて軟着陸させる。コケて骨折>壁に激突した擦り傷。
●奉仕だけではいけない。自分が健康でいて、初めて良いケアが出来る。
●これから外国の人が日本で介護を学ぶけど、どう見られるか。海外では立てない人は2人介助、でも日本では1人介助。文化の違いもあるけど、今後どうしていくのか。これからはマニュアル作りが大事。外国の人にもわかるように。
●トップダウンだけでは変わらない。ボトムアップも大事。下から変えていこう。どうやって巻き込むか、戦略が大事。写真とか数値とか普段の記録。それでどう良くなったかを示す。共感者を増やす。進め方が大事。これを上に訴えていこう。
●日本は腰痛対策は個人任せが多い。1980年から腰痛は右肩上がり。厚生労働省が中腰アカンとか予防とか言ってても右肩上がり。
●・ボディメカニクス・体力筋力アップ・腰痛ベルト・接骨院・技術向上…これらは対処でしかない。原因は重さや頻度なのに。昔からある対策が効いてないなら変えていかなと。
●環境を改善するとか、福祉用具にお金を使うとかしていかないといけない。連続しての前かがみを止めるとか、体操をするとか、もっと自分の身体に関心を持って、腰痛を起こさないようにしていきましょう。
利用者よりも職員を守る…!
職員が盾になって利用者を守れとか言わないのが良いね
3.ノーリフトケア実践マニュアルのカタログ
勉強会で教えて頂いた、ノーリフトケア実践マニュアルのカタログ。
こちらで買えます↓
でも買い方が面倒臭いそうですよ(´・ω・`)
書籍・パンフレット/合同会社ナレッジソース
2.介助時のベッドの高さ
排泄介助時のベッドの高さに、決まりなどあるのでしょうか?
ベッド上で介助をする時は、腰を痛めないように、自分の腰のあたりまでベッドを上げるように、
と私は習いました。
しかしベッドを上げるのは、地味に時間がかかります。
そしてそんな時間のかかる事をきちんと行う職員は現場で同僚から
「仕事が遅い」
と烙印を押され陰口をたたかれます。
もっと言えば「仕事が出来ない奴」「使えない」とも言われるのです。
教わった事なのにそれを守ると遅いと揶揄され、実際仕事が押して現場が回りません。
そうしてスピードを上げるために省略するのが、現場ではベッドの上げ下げの時間になりがちなのです。
1・(漫画)介助時のベッドの高さ
以前介護実技の勉強会で、理学療法士の先生にこんな風に教わった事があります↓
へー!
これを教わって以来、ベッドの高さは顔を無にしてこのポーズを決めて上げています。
いや…一人でこのポーズしてんの恥ずかしいな…
手は背屈せずとも、だらんと下げたままでも大丈夫よ…ただの目安だからね…
なるべく無になって、ベッドを上げましょう。焦ってはいけません。
周りが忙しがっていても、その職場が悪いのです。
周りに合わせて急いだ結果腰を悪くしても、労災は(大抵)下りません。治療代は自分が払う事になるのです。
自分の身体は徹底して自分で守り抜きましょう。
2.エビデンス・根拠
排泄ケア時のベッドの高さに、決まりはあるのでしょうか?
誰もが安全に、腰を守れる高さって、あるのでしょうか?
見つけた論文がこちらになります↓
●論文「介護者の身体的負担からみた適正なベッドの高さについて」
考察
>本研究においても、ベッドの高さが身長の50%の場合に比べて、45%・40%の場合の方が腰部に痛みを訴える被験者が多かった事から、腰部に対する負担性を減じるには、身長の50%以上のベッドの高さが適当といえよう。
>ところが、本研究結果に示す如く、ベッドの高さが増すと今度は上肢筋の負担性は増加する。
>我々の研究結果をもとに、上肢筋の負担性を軽減するために都合の良いベッドの高さを求めると、身長の45%以下となる。以上の意見を考え合わせると、ベッドの高さは画一的に決定されるべきでなく、介護動作の種類、介護者の身体状況などから総合的に検討していくべきである。
ベッドが高いと腰の負担は減るけど、代わりに腕が痛くなるという…
そういえば上で紹介した、理学療法士の先生に教わったベッドの高さ↓
身長165㎝の私の81㎝の高さは、49%って事になるね。
大体50%だから、論文の通りだね
●(株)光洋の快護通信「ベッドの高さで腰痛予防」
>ベッドの高さ調整は身長の50%以上
>例えば160㎝の方の50%は80㎝です。ですが高いベッドでのおむつ交換は、支援者の腰の負担は軽減出来ても上肢の負担が増えてしまうと指摘されています。
引用文献を見ると上の論文を元にして書かれているようです。
●シーホネンスのホームページ
側臥位から側臥位に体位変換する介助の場合、ベッドの高さが身長の半分以上になると、膝が伸びきって介助する手にかかる力が大きくなります。介助者の身長が160㎝の場合、マットレスの厚みを含めて65㎝程度のベッドの高さ(身長の約40%)が介助しやすい高さと言えます。
(↑2017年頃にホームページで「役立つベッドの使い方」として紹介されていて、保存しておいた画像なのですが、残念ながらリンクが切れたのか、現在のシーホネンスさんのホームページでは見つかりませんでした。)
40%ってだいぶ低い感じがするなぁ…
まあ大体、40~50%くらい、腰の辺り、なんでしょうね。
そしておむつ交換後、ベッドの高さを元に戻すのを忘れずに…!
この高さから転落したらシャレになりません(´;ω;`)
3.理想のベッド
こんなベッドがあればなぁ…と現場でよく妄想していました。
1.(漫画)こんなベッドが良い
いや…自分がその場を離れた隙に、利用者さんが動いて、体のどこかをベッドに挟んで窒息とか大けがとかになったらその責任はベッドメーカーに行くのか介護士に行くのか…
せやな
ただ、こういうのがあれば、少し助かるのに…という妄想です。
めっちゃ酔いやすい人にはこのボタン、平気な人にはこのボタンっていうのがあればいいのにね-
ベッドを上げ下げする時間って、数十秒ですが、とてもとても長い時間に感じますよね。
現場はとても忙しく、ひっきりなしに鳴るナースコールに急き立てられて、職員はバタバタと走り回っているのです。
ベッドの上げ下げの数十秒が、本当にもどかしい。
そしてやっとコール先の利用者さんの所へ着いたと思ったら、全然大した用事じゃなくて心が折れたり…。
どこかのベッドメーカーさん、開発してくれないでしょうか…
2.理想のリモコン
リモコンもメーカーによって特徴がありますね。
1.パラマウントのリモコン
よく見る…!そして字がハゲて読めない事もしばしば…!
2.フランスベッドのリモコン
3.プラッツのリモコン
こう描いたけど現場ではほとんど白しか見た事ないなぁ。白地に青字のボタン。
4.テンピュールとパナソニックのリモコン
5.こんなリモコンが良い
視力の弱い方でも手探りで作動出来るリモコンって良いですよね。
おばあちゃんがこんな表情で「見えないねー」と言ってる姿を何度か見た事があります。
印刷された文字だと、長年使う中でハゲてしまい読めない事も多いんですよね。あと、そもそも文字が小さかったり。
プラッツやフランスベッドみたいに、ボタンがでこぼこしていると指先の感覚で上か下かがわかりますし、大きい表示だともっと良いですよね。音声が出ても良い。
どこかのメーカーさん、上の漫画で描いたベッドと同様、便利なリモコンを開発してほしいです
(*´▽`*)もしかしたらすでにどこかからか、出ているのかもしれませんが…
3.介護ベッド選び
私が「あ、これ良いなぁ」と思った物を紹介していきます。
1.介護用品店サイト
こちらのサイトが面白かったです↓
こんな感じに並べてくれているので、わかりやすいですね( *´艸`)↓
私が在宅ヘルパーをしていた時は、フランスベッドを利用している方が多かった印象です。
在宅でよく見かけるベッドと、施設や病院でよく見かけるベッドと、違いがありますね。
2.フランスベッドの低床ベッド
2018年10月のケアテックスで、フランスベッドのブースが楽しかったです。
担当の方曰く「うちのが業界で1番低いです」だそうですよ。
ベッドの高さを上げた時のベッド下がスッキリしてる。
業界で一番低いのが特徴だけれども、その分、最大の高さも低くなるんですよね…
リモコンでウィーーン…と高さを上げていって、最大高さが61㎝という事なので、
私にはあと20㎝高さが欲しいところだわ…
このベッドでおむつ交換してたら腰をいわしてしまう…
3.しっかり座れるベッド
1.ジンマーニ
私がtwitterで2018年に呟いたのがこちらのベッドです↓
2020年現在、「ジンマーニ 大阪 介護ベッド」と検索しても、私の呟きしかヒットしません…
あれぇ…?(;´Д`)
呟きの続きですが
この当時でもよくわからなかったのですから、今現在は迷宮入りです…
このベッドは何だったのか…
2.パラマウントベッドの楽匠Z
上で紹介したベッドは結局謎のまま。使っている人や使用感のレビューも見つかりませんでした。
でもさー今までの、足を上げてから頭を上げるの、自分が介護ベッドに寝てみると結構しんどかったし、ああいう足が下に下がるタイプの方が体に痛みが出にくいと思うんだよねー
歯医者さんみたいな。
それなら、パラマウントベッドの「楽匠Z」なんかが形近いかもよ
引用 カスタマ
メーカー パラマウントベッド楽匠Z
おお…!ベッド全体が斜めに…!これ良いね~
4.プラッツ「『抱え上げない』移乗のススメ」カタログ
2018年6月発行のこちらのカタログに、私が漫画とイラストを描かせて頂きました。
介護ベッドのプラッツさんから依頼があり、ツイッター上でやり取りをさせて頂いて、実現しました。
凄いですねツイッター…。趣味で下手くそな漫画を描いている、しがない施設ケアマネに漫画の依頼がくるのですね。ありがた申し訳ない話です(プロの漫画家さんに)。
このカタログの中でも、「ノーリフトケア」について少しですが描いてあります。
腰痛持ちの職員の奮闘や、移乗の仕方なんかが描いてあります。
宜しければ、ご覧下さい
●ダウンロード
http://www.platz-ltd.co.jp/support/catalog/pdf/guidebook/180605_guidebook2.pdf
●カタログの請求
●プラッツのホームページ
●キャラクターたち
キャラの名前を考えて下さいと言われたのですが何も思いつかなかったので「色」で付けました。
↓ お気に入りは花子さんです。可愛く描けて自分でも満足です(´艸`*)
↓以下特にカタログに載っていない番外編イラスト
↑ 新人灰田が皆から可愛がられていたら良いなあと思って描いた1枚。
↑ 主任の意外性を描きたくて描いたけど特に広げられなかったので終了。
プラッツさん、面白い仕事をさせて頂きまして、ありがとうございましたm(__)m
今後もう関わる事はありませんが。
まとめ
介護ベッドの高さのエビデンスは、探すと意外になく、1987年の神戸大学医療技術短期大学部の論文しか見つけられませんでした(他にももしご存じの方おられたら教えて下さいm(__)m)
でも身長の50%の高さが腰痛予防になるとわかったところで、上肢筋の負担は消えません…。
結局は介護者がそれぞれ自分の身体に合ったやり方を、模索していくしかないのですね(;´Д`)
介護ベッドも進化を続けているので、バリアフリー展などで毎年新作を確認するのが楽しみです。
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。
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